初の著作、『アーキテクチャの生態系』が出ました。

アーキテクチャの生態系

アーキテクチャの生態系

諸々忙しく、慌しくしているうちに、いつのまにか発売日が来ていました…。
事前にご紹介頂いていた皆さん、ありがとうございます。

東さんにも、とても立派な帯を頂きました。

ウェブから生まれた新世代の社会分析。
本書ぬきにニコニコ動画は、そして日本社会は語れない。
――東浩紀

おいおい内容紹介のエントリなども書きたいと思いますが、とりあえず、この本は「Wired Vision」の連載(濱野智史の「情報環境研究ノート」 | WIRED VISION)をまとめたもの、ということになっています。しかし、全352Pの内容のうち、Wiredと完全に被っているのは1/3程度ではないかと思います。

おいおい内容も紹介していきたいと思いますが、とりあえず目次の引用と補足だけでも:

第一章 アーキテクチャの生態系とは
第二章 グーグルはいかにウェブ上に生態系を築いたか
第三章 どのようにグーグルなきウェブは進化するか
第四章 なぜ日本と米国のSNSはちがうのか
第五章 ウェブの「外側」はいかに設計されてきたか
第六章 アーキテクチャはいかに時間を操作するか
第七章 コンテンツの生態系と「操作ログ的リアリズム」
第八章 日本に自生するアーキテクチャをどう捉えるか

上の章立ては、いわば歴史年表のようにもなっています。上から順に、2000年代の、とりわけGoogleWeb 2.0以降の「ウェブ社会」(という言葉は本当は使いたくありませんが)に関する考察や分析をまとめたのが、本書です。


以下、簡単に解説です(小見出しもおいおい公開します)。

    • 本書の位置づけとアーキテクチャ概論です。以前、『InterCommunication』の最終号に寄稿した「生態系マップ」を収録しています。基本的にこの図が本書の見取り図にもなっています(カバーしていない部分もありますが)。
  • 以前インコミに寄稿した図:

ソーシャルウェアの生態系マップ

  • 上を元に今回デザイナーさんにデザインしてもらった図(Amazonより):

  ・・ここから先の章では、具体的なアーキテクチャの分析を行っています。

  • 第三章 どのようにグーグルなきウェブは進化するか
  • 第五章 ウェブの「外側」はいかに設計されてきたか
    • Winny論です。こちらも『10+1』に昔寄稿した文章が元にはなっています。おそらく、「アーキテクチャ」概念がもっともコンパクトに凝縮されているのが、この章ではないかと思います。個人的にも思い入れの強い内容です。
  • 第七章 コンテンツの生態系と「操作ログ的リアリズム」
    • Wiredにも掲載した、初音ミク論(オープンソースとの比較)と、ケータイ小説『恋空』の内容分析についてです。『恋空』論はこちらの本書ほうで完結しています。また、初音ミク論のほうでは、今回新たに「N次創作」という言葉をつくって、主にニコニコ動画上に花開いた二次創作/MAD文化について論じています。

  ・・という感じで、第二章から第七章までが、具体的なアーキテクチャなりコンテンツなりの分析になっています。

  • 第八章 日本に自生するアーキテクチャをどう捉えるか
    • 最後に、情報社会論と日本社会論です。Web 2.0にせよ、Googleにせよ、シリコンバレーにせよ、米国のネット社会のことを考えていれば、それで私たちの情報社会のことを考えたことになるのだろうか。そんな長年の疑問や、もやもや感をぶつけてみた章です。ハイエクレッシグについても論じています。


ということで、以上、ごく簡単に内容紹介を終わります。

「Quick Japan」に寄稿しました。

けっこう前に出ているのですが、堀北真希さん表紙のクイック・ジャパンに寄稿しています。タイトルは「ニコニコ動画で起こっている本当のこと。」です。例によってニコ動論ですが、ちょっと切り口変えてみてますので、まだ未読の方はぜひ。

「Review House 02」に寄稿しました。

以前も告知したのですが、『Review House 02』に寄稿しました。タイトルは「月はまた昇る――ニコニコ動画における「コメントアート」とその「保守主義」(メンテニズム)をめぐって」というものです。

目次や販売場所などの詳細は、編集長の伊藤さんのブログをご確認ください。Amazonでは買えないようです。

都内書店(新宿紀伊国屋、新宿ジュンク堂、池袋ジュンク堂ブックファースト新宿店、渋谷リブロ、Nadiff、photographer's gallery、タコシェ模索舎三省堂神保町店など)、ブックファースト京都店などにて、順次販売予定です。

僕のレビューは、ふんどしP「初音ミクオリジナル「moon」をゲーム風にしてみた」というニコ動上のPV作品に関するものです。この作品自体がアップされたのはかなり以前のことなのですが、特に「メタフィクション」ならぬ「メタアーキテクチャ」的な作品として非常に優れているので、論じてみました。

※ただし、上の作品は、すでにある理由で、僕が論じているレビュー文との内容の齟齬(というか欠落)を起こしています。その内容についてはぜひ雑誌のほうをあたってみてください。ただ、そのうち某手段を使って動画を公開するかもしれません。

また、ふんどしPの作品の中でも、下の作品は特に「メタアーキテクチャ」的におすすめです。こちらは当時ランキングにも入っていたので、ご存知の方も多いかもしれません。

ゼロアカ道場第4回関門(2008年11月9日 - 第7回文学フリマ)

次は来月の告知ですが、11/9の文学フリマで頒布される、ゼロアカ道場の皆さんの同人誌に寄稿したり、インタビューされたり、インタビューに参加したりしています。

詳細は以下のまとめをご参照ください。


筆者が関わっているのは、以下の3冊です。

    • タイトルは「擬似同期化するファッションの世界」。話題はなぜか「ファッション」についてです。あ、でも脱オタについてじゃないです(笑)。といっても、H&Mあたりがメインの話題ではあるのですが、裏原やスケシンの話もあれば、浅田彰ハイエク、そしてなぜかデリダやルソーの話もありと、けっこうガチな論考になっているのではないかと思います。
    • すでに大きな話題を集めているようですが、なんといっても、こちらは、あの「わかむらP」のロングインタビューが載っています。僕はインタビュアーとして参加させて頂きました。上のURLでは「わかむらP」とのツーショットも掲載! しかし、せっかくなのだから、僕もマスクを被ればよかった……! かなり後悔しています(笑)。
    • また、「MTVとMADについて――《神話》的映像作家たちに関するいくつかの注釈」という、タイトルの通りですが、注釈的位置づけの文章も寄稿しています。
    • 「萌え理論」のしろうと(sirouto2)さんが中心となって編集されているこちらの同人誌には、「初音ミクに出馬させてみた――「共有党宣言」のための覚書」 というコラムを寄稿しています。内容はタイトルの見たまんま、という感じなのですが(笑)、初音ミクから代理-表象(representation)の問題を考えてみた、という、短いながらもけっこうハードな論考です。結局、総選挙はまだまだ先のことになりそうですが……。


余談ですが、このブログを見てくださっている方の半分近くは、どちらかといえばネット系住人の方が多いと思うので、文学フリマに行かれたことのない方はもちろんのこと、いわゆる「文学」や「批評」に対する普段からの関心も、どちらかといえば薄い方も多いのではないかと思います(かくいう僕自身がそういう人なので……。こんなの、何の自慢にもなりませんが、ここ1年でまともに読んだ小説は『恋空』だけですw)。

とはいえ、もし上の3冊以外にも、上のゼロアカまとめ紹介記事や、また、もちろん文学フリマにはゼロアカ関連以外にも多くの方が同人誌を出されているので、公式の参加サークル一覧(http://bunfree.net/dai7kai/circle_detail.html)などをごらんになっていただいて、ちょっとでも気になるものがあれば、ぜひ足を運んでみるのが吉ではないかと思います。11/9は、僕も会場をうろちょろしている予定です。